クリニック経営が安定してくると、多くの院長先生が次の展開を考え始めます。
それが分院展開です。
患者数が増えてきた。
売上も安定してきた。
スタッフも増えてきた。
そのような状況になると、
「もう一院出せるのではないか」
と考えることは自然な流れだと思います。
実際、分院展開によってより多くの患者様へ医療を届けられるようになり、地域医療への貢献を広げられるケースもあります。
しかし現場を見ていると、分院展開がうまくいくクリニックと苦しくなるクリニックには明確な違いがあります。
その違いは、資金力や立地だけではありません。
実は多くの先生が見落としがちなポイントがあります。
それが「再現性」です。
増やすことと再現することは違う
分院展開というと、
「クリニックを増やすこと」
と考えられがちです。
しかし実際には、増やすことよりも難しいことがあります。
それは、
今のクリニックを再現すること
です。
本院では問題なく回っているように見えても、
院長が毎日現場にいる。
ベテランスタッフが支えている。
長年の経験で何とか運営できている。
という状態で成り立っていることは少なくありません。
その状態のまま分院を出すと、本院の良い部分だけではなく、見えていなかった問題まで一緒に広がります。
院長の目が届きにくくなる分、問題はむしろ大きくなりやすいのです。
分院展開でよく起こること
分院展開後に苦しくなるケースでは、共通した特徴があります。
例えば、
院長しか採用面接ができない。
院長しかスタッフ教育ができない。
院長しか重要な判断ができない。
院長しか患者様対応の基準を示せない。
こうした状態です。
本院が一院だけなら何とか回るかもしれません。
しかし分院が増えると、院長が対応しなければならない場面も増えていきます。
結果として、
分院展開によって楽になるどころか、
以前より忙しくなってしまう。
というケースは決して珍しくありません。
分院の前に整えるべきこと
分院展開を考える時、多くの先生はまず、
「どこに出すか」
「誰を院長にするか」
「資金は足りるか」
を考えます。
もちろん、これらは重要です。
しかし、その前に確認すべきことがあります。
それは、
今のクリニックの運営が、仕組みとして回っているか
です。
たとえば、
新人が入っても一定の流れで育てられるか。
スタッフが変わっても患者様対応の質が大きく変わらないか。
数字を見て、現場の状態を把握できているか。
院長が細かく指示しなくても、同じ方向を向いて動けるか。
ここが整っていない状態で分院を出すと、
新しいクリニックを作ったつもりが、
本院で抱えていた課題をもう一つ増やすことになります。
分院展開とは、新しい建物を作ることではありません。
今のクリニックで行っている医療や運営を、
別の場所でも再現できる状態にすることです。
だからこそ、分院を考える前に、
自院は仕組み化できているか
を一度確認する必要があります。
強い組織には再現性がある
安定して成長しているクリニックには共通点があります。
それは、
再現性が高いこと
です。
新人が入っても一定の水準まで育つ。
管理者が変わっても大きく方針がぶれない。
スタッフが異動しても患者様対応の質が維持される。
つまり、
特定の個人の能力だけに依存していないのです。
もちろん優秀な人材は重要です。
しかし組織として成長するためには、
優秀な人がいること以上に、
良い状態を再現できることが重要になります。
まとめ
分院展開がうまくいくかどうかは、開院した後ではなく、その前に決まっていることが少なくありません。
理念が浸透していること。
教育の仕組みがあること。
業務が標準化されていること。
数字を見て経営判断できること。
そして院長に依存しすぎない運営になっていること。
こうした土台が整った時、初めて分院展開は大きな力を発揮します。
分院展開とは、単にクリニックを増やすことではありません。
自院で実践している医療や理念を、より多くの地域へ届けるための手段です。
だからこそ、増やす前に再現できる状態を作ることが重要なのだと思います。
そして、それができる組織こそが、長く安定して成長していくのではないでしょうか。
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