クリニック経営:金融機関とどう向き合うべきか その3

クリニック経営:金融機関とどう向き合うべきか その3

第3回:自己資金と「属性」はどう評価されているのか

― 銀行が見ているのは、数字と構造である ―

いつも俊爽会グループのブログをご覧いただき、ありがとうございます。
俊爽会グループ スーパーバイザー(SV)の堀尾です。

前回は、
銀行が事業計画書のどこを見て判断しているのかについて、
実務に即して整理しました。

  • 借入額の妥当性
  • 保険診療だけでの返済力
  • 経費構造の現実性
  • 想定より悪くなった場合の耐久性

今回はその続きとして、
多くの先生が疑問に感じやすい
「自己資金」と「属性」について解説します。


「自己資金は多いほど良い」は、本当か

融資相談の場で、
「自己資金は多い方が良い」と言われた経験のある先生は多いと思います。

これは、銀行側の立場としては正しい意見です。
自己資金が多いほど、銀行が負うリスクは小さくなるからです。

しかし、
経営者側の視点では、必ずしも最適解とは限りません。


銀行が自己資金を見る本当の理由

銀行が自己資金を見る目的は、
「お金をたくさん持っているか」ではありません。

実際に見ているのは、次の2点です。

  • 借入額が無理のない水準か
  • 経営者が一定のリスクを自ら負っているか

つまり、

『自己資金 = 経営への関与度・覚悟の確認』

という意味合いが強いのです。

一定額の自己資金があれば、
それ以上の多寡は、
融資可否を大きく左右しないケースも少なくありません。


すべてを使い切ることが、経営上の正解とは限らない

開業直後のクリニックでは、

  • 患者数の立ち上がりが想定より遅れる
  • スタッフ採用が計画通りに進まない
  • 広告や認知が軌道に乗るまで時間がかかる

といった事態は、珍しくありません。

こうした局面で重要になるのが、
手元に残っている現預金です。

そう言うと、多くの先生が、
「それは当たり前だ。余剰資金の重要性は分かっている」と言います。

それでも実際の開業では、
ほぼ全員が資金を使い切る設計を選びます。

理由はシンプルで、
「利子を払ってまで借りるのだから、今使う分だけ借りようとする」からです。

そこで、俊爽会グループでは、
「余剰資金分として、あらかじめ手元に残しておく借り入れ」
が、経営の選択肢を守ると考えています。

手元資金があることで、
・慌てて追加融資を探す
・短期的なコスト削減に走る
・本来やるべき投資を止める

こうした判断を避けることができます。

余力とは、
単なる安心材料ではなく、
冷静な経営判断を維持するための条件です。


「属性」とは何か ― 銀行が実際に見ている中身

次に「属性」について整理します。

この言葉は曖昧に使われがちですが、
銀行実務では、ほぼ以下の項目を指します。

  • 年齢
  • 医師免許取得後の年数
  • 勤務先(大学病院・基幹病院など)
  • 勤務医としての年収水準
  • 家族構成(扶養人数)
  • 過去の金融事故の有無

いずれも、
「返済能力がどれくらいの期間、安定して続くか」
を判断するための情報です。

ここに、
人脈・紹介・気合といった要素は含まれません。


「属性が高ければ何とかなる」は危険な考え方

医師という職業は、
確かに社会的信用の高い属性を持っています。

しかし、

  • 借入額が過大
  • 固定費が重すぎる
  • 返済計画が楽観的

この状態では、
属性が高くても経営は苦しくなります。

俊爽会グループが重視しているのは、

『属性に頼らず、無理をしない構造を作る』

という考え方です。


俊爽会が大切にしている視点

俊爽会グループでは、

  • 自己資金をどれだけ出したか
  • 属性が高いか低いか

よりも、

『想定外の事態が起きたときに、立て直せる余地が残っているか』

を最も重視しています。

理念に基づいた医療を、
地域で長く続けるためには、
経営にも余白が必要です。


次回予告:銀行とどう付き合うか

次回はいよいよ最終回です。

「金融機関との付き合い方」について整理します。

  • 1行だけに依存してよいのか
  • 銀行はどう選ぶべきか
  • 長く付き合える関係とは何か

テクニック論ではなく、
クリニックを守るための現実的な視点からお伝えします。

ぜひ次回もご覧ください。