設備・備品の購入の際に考えるべきことは
多くのクリニック経営者が開業時に「予算を抑える」「見た目を整える」ことに集中しがちですが、本当に注目すべきは”日々の診療の流れをスムーズにするための戦略的設備投資”です。
俊爽会グループでは、最小の労力で最大の成果を上げること、つまり「1人当たりの生産性最大化」、そして「他院との差別化」を意識した集患に繋げるための設備投資、投資回収期間を短縮するために「費用対効果」を高める方法の3つの視点に重点を置いております。以下に、「最短で経営を軌道に乗せる」ための設備戦略をご紹介します。
1人当たりの生産性最大化について
今回は当院が導入して、どの診療科にも有効な設備についてお伝えします。
電子カルテ+予約・問診システムの自動連動
当院では、クリニック開業時紙カルテでのスタートでした。理由は当時はオーダリングシステムが増え始めたところで、まだまだ電子カルテは普及しておらず、私も使用した経験が少なかったからです。慣れ親しんだ方法でしたので、スムーズに開始する事が出来ましたが、カルテが増えていくにつれて保管先に困るようになり、電子カルテを導入しました。紙カルテに比べ、カルテ作成が速くなり、医師の文字が読めないといった事が無く、データの検索がしやすくなり、保管先問題も解決しました。コストに関しては、当初 オンプレミス型電子カルテを導入し、更新に多大な費用が掛かっていましたが、現在はクラウド型になり費用面は大幅に低コストとなりました。また電子カルテの設定により、このコストをかからなくすることが可能です。クラウド型はシステム障害などで繋がらない場合があるのではないかという不安が一番強かったのですが現状はそのような事はほとんどありませんでした。クラウド型が出来始めたころは多かったようですが、サーバーを増やしたり分割する事で負荷がかからないように対処しているようです。(ただしシステム障害の可能性は常に念頭に置いて対策をしておくことをお勧めします。)当院はエムスリーデジカルを採用しました(以下、私は決してエムスリー社の回し者ではありませんが参考までに)。電子カルテで実際診療を行う時に重要になる事がセット登録です。そしてこのセット登録は、医師の診療のみならずレセプト作業にも有効で、ぜひ行うべき作業ですが、膨大なため時間と労力がかかります。フランチャイズ加盟者の先生がエムスリーデジカルを導入した際(当フランチャイズでは医療機器を、ディスカウントも出来るため推薦はしていますが、指定ではありません。)には、そのセットもコピーできますので、簡単に電子カルテ導入が行えます。エムスリーデジカルもまだまだ発展途上で完璧な電子カルテではありませんが、許容内ではないかと思われます。また同じエムスリー社からデジスマという予約問診システムも導入しています。問診表を、事前に患者さまが記載していただけるので、院内での待機時間や診察時間を減らす事が出来ます。また予約システムにより混雑時間帯の調整を行う事が出来、患者さま満足度を向上し、先生やスタッフ負担を減らす事が出来ます。コストは別途かかってしまいますが、その浮いた時間で、より多くの患者さまを診察していく事が出来ます。
タブレット端末の活用
先生方の患者さまは待合にいる時何をしてますでしょうか?待ち時間が長ければ長いほど患者さまの不満は貯まりクレームへと繋がります。そこでこの時間にタブレットを使う事をお勧めします。タブレットに院内情報や、病気の情報、検査説明や手術術前説明など、何度も人が話をする内容などは動画にしてまとめておくと良いでしょう。患者さまは待ち時間の有効活用が出来て、スタッフはその間に別の仕事に取り掛かれます。
自動精算機の導入
会計の時間を減らし、医療事務の負担を減らすことが出来ます。また1日の締めの作業で、金額が合わないといったことがなくなり、無駄な残業を減らす事にも繋がります。
最近はもっと進化して、会計後払いサービスを導入しているクリニックもあります。電子処方箋がもっと普及し、コストが下がれば導入しようかと当院も検討中です。QRコードによる自動受付も行えば、診療が終わった後に、患者さまはそのまま帰宅でき、会計待ち時間をゼロに出来ます。
医療DXは費用は掛かりますが便利になると思います。この費用分を診療報酬で補填してほしい所ですが、一部しかされずクリニックの持ち出しとなるでしょう。その持ち出し部分と比較して、スタッフの負担を減らし、その分集患に活かせるかどうかが導入するかどうかの一つの判断基準かと思います。補助金なども活用しながら検討しましょう。
「他院との差別化」について
周辺地域にない(または少ない)医療機器は自院の強みになります。導入の際には、まずは既存患者さまのニーズがあるか、地域のニーズがあるかを調べていく必要があります。そして導入した際には積極的にアピールしていきましょう。新しい取り組みは患者さまに、自院への良い印象を与えます。
また新しい医療機器は集患だけではなくスタッフ雇用にも役に立ちます。美容レーザー治療を行いたい医師を雇えたり、AI内視鏡に興味のある医師を雇うことも出来ました。こちらも同様に導入した際には面談時にアピールしていきましょう。
さらに新しい治療は、スタッフの活性化にも影響を与えます。その医療機器をどのように患者さまに知ってもらうか、様々な広告や配布物を作成していくなど、さまざまな案を出し合いながら普及させていくことも楽しいものです。新しい事を行う事により、スタッフの成長を促し雇用の安定化に繋がります。
「費用対効果」について
高額な設備は高くて手が出せないと初めから見向きもしない先生もおられます。ですが、経営をしていく為には、常に投資的な観点から物事を見ていく必要があります。500万円の医療機器と100万円の医療機器があり、どちらを導入するかの判断には初期費用だけではなく、ランニングコスト、普及のための広告費、その機器を使うための人件費などを含めた投資回収期間を考えます。広告に関しても100万円の広告と、20万円の広告でどちらを選ぶかはそれによってどれだけ集患が期待できるかなどを考え、その結果100万円の広告の方が安いことも当然あるわけです。他にも、金額的な面以外に前述した生産性を向上できるか、他院と差別化できるかについても考えていく必要があります。この費用対効果を高めるためには、効果を高めるか費用を安くする必要があります。
効果を高めるためには、その医療機器を使う患者さまを増やす必要があります。すなわちしっかりとした宣伝が必要になります。導入したらしっぱなしの先生がおられますが、積極的に伝えていかない限り、そもそもその存在自体を知らない患者さまはたくさんおられます。院内掲示、ブログ、広告、口コミなど様々な媒体を使用していきましょう。分院展開をしていれば1店舗だけその機器を導入し、他院で希望の患者さまがおられたらそのクリニックへ紹介をすることも可能です。
また導入コストを減らす取り組みも肝心です。補助金の活用や、使用頻度が少なければ中古で購入する、複数購入によるボリュームディスカウント、交渉で値切るなどがあります。特にうまくニーズを把握できない時は中古から始めることはおすすめです。それでたくさん患者さまが来られれば買い直すと良いでしょう。また複数購入は交渉しやすくなり、ほぼ間違いなくボリュームディスカウントが見込めます。
まだまだお伝えしたい事もありますが、今回はこのあたりで。新しい試みはスタッフには負担になる事が多いので、断然開業時から始めていた方が良いです。ただし、私の経験上、途中から変えていくことも労力はかかりますが、スタッフときちんと話し合い、「患者さまへのより良い医療の為に」という合言葉で臨めばスタッフも付いてきてくれるものです。
私自身も、多くを悩みながら道を切り開いてきました。
これをきっかけに、先生方のクリニックがもっと輝くことを心から願っています。