俊爽会の理念について①

俊爽会の理念について①

私たちは3つの理念を大切に、診療を行っております。1つ目は「実践型全人的医療」。2つ目が「地域医療」。3つ目が「チーム医療」になります。

実践型全人的医療」とは


今回は1つ目の「実践型全人的医療」についてのお話です。これは言葉の通り、全人的医療を実践出来る制度を整えて、全人的医療を提供していくことです。
全人的医療とは、患者さんの特定の部位や疾患のみならず、心や体全てを診ていく診療のあり方ですが、日本の保険診療では、それを真に実践していくことは難しいと思います。なぜなら保険診療は、患者さんの訴えが無ければ診療に当たることが出来ないからです。
私は研修医時代にこのような経験をしました。糖尿病でかかりつけだった患者さんが、ある時胃の不調を訴え、精査したところ進行癌であった、また、初診の患者さんで、精密検査を行ったところ、こちらも同じく進行癌が見つかりました。
これらの患者さんは保険診療のみでは救うことが出来ません。そこで重要になってくるのが予防医学です。私たちは患者教育に重点を置いた予防医学を積極的に取り入れて、患者さんの訴えに対応する総合診療と合わせ、より実践的な全人的医療を提供出来る制度を構築しました。

全人的医療を日々の診療に落とし込むには


全人的医療を実践していくためにはどうすればよいか。それは疾患啓蒙期間を月ごとに定め、患者さんにその疾患についての説明や、検査や検診、ワクチンなどの案内をしていくことです。患者さんに1つでも健康知識を持って帰ってもらうのです。これを医師のみならずスタッフ全員で行います。待合やブログでの案内、医療事務や看護師からも資料などを直接渡します。このように患者教育を継続的に行っていくことで、患者さんの健康意識を高め、健康寿命を伸ばすことが出来るのです。
そして、患者教育こそが、かかりつけ医の行う重要な役割の1つであると考えます。健診などの案内は行政も行っていますし、テレビでの健康番組やインターネットでも病気の情報は手に入ります。しかし、頻繁に顔を合わせる医療のスペシャリストであるかかりつけ医、かかりつけ医院から直接言われることで、患者さんの行動が変わるのです。信頼ある先生や医療スタッフから、検査の必要性などを伝えられた時に、「先生が言うならやってみようか」「やっぱり検査受けた方が良いんだね」と意識が変わっていくのです。実際に私たちのクリニックでも、「受付でこのワクチン勧められたんだけど、どうなの?」と興味を持って下さったり、「先生に勧められた検査で癌が早く見つかって本当に助かりました」と、このような声をたくさん頂戴しています。
実践型全人的医療を行う事で、「かかりつけ患者さんの主病以外の病気」も早期発見する事が出来ます。

「私と家族のかかりつけ医」プロジェクト


実践型全人的医療は「初診で進行癌」の患者さんを減らす方法にも繋がっていきます。「初診で進行癌」になる人は大半がほとんど病院にかかった事がなく、検査も受けていない方々です。費用面なのか、病院を怖いと思っているのか、はたまた自分は病気にならないと思っているのかわかりませんが、健康意識はかなり低いと思われます。もちろん行政の案内や、健康番組ではなかなか行動に至りません。そういう方にどうやってアプローチすれば良いかと考えた時、やはり大切になるのが、その人と信頼のある人の言葉なのです。大切な家族の言葉であるという考えに至りました。
私たちの行っている実践型全人的医療は患者教育に力を入れています。例えば、その患者さん(娘さん)が、そのご家族(父親)に、「仁愛堂さんで、大腸検査勧められて、やったらポリープ見つかって切除してもらったよ。癌の予防が出来たよ。お父さんもやってみたら?」と伝えてくれたらどうでしょう。娘が言うならやってみようかと意識が変わるかもしれません。
私たちはこの実践型全人的医療に「私と家族のかかりつけ医」というキャッチコピーを加え、患者さんだけでなく、そのご家族も来院しやすいクリニック作りをしていこうと考えました。この「私と家族のかかりつけ医」プロジェクトが広がれば、もっと癌の早期発見や、検査やワクチン、健診の啓蒙に繋がっていくでしょう。
このように実践型全人的医療は、日本のかかりつけ医療の質を上げて、患者さんの健康寿命をより伸ばしていくことが出来る、日本の医療の根本から変えていける画期的な制度なのです。
そして、「地域に根づいたかかりつけ医が、全人的医療を行う」という理念を広めていくことこそが、俊爽会の役割であり、理念に賛同していただける先生と共に「日本の医療を変えていきたい」と考えています。